心をのばす子育て

障がい児がだすサインの解読法

困った行動・その4 自傷行為

痛いでしょ!!!

 

自閉的症状を持つ子どもの中には、

 

壁や床に頭突きをしたり、

自分の手首を噛んだり、あごを叩いたり、

中には自分の膝にあごを打打ち付けたりする子供もいます。

自分の太腿をつねって痣だらけにすることもあります。

自分の手の甲や指や手首を噛んで固いタコが出来てしまう子どももいます。

 

子どもが自傷行為をするのを見ると

周りの大人はとても辛い気持ちになってしまいます。

 

「どうしてそんな事をするの?痛いでしょ!」と、とっさに

抑えて止めてしまうことでしょう。

 

誰だってそうしたくなります。

 

しかし、その場は抑えて止めても、

自傷行為をやらなくなるかと言えばそうでもありません。

場面によっては、これでもか、と言わんばかりに

自傷行為をやってみせることさえあります。

 

自閉症状を持つ子どもの中には痛覚が鈍感と思われる子どももいます。

傷口をほじくったり、かさぶたをはがしたりする自閉症児は結構いて、

周りの大人が痛そうと思うほど、本人は痛みは感じていないようです。

 

自傷に夢中になっている時は

脳内モルヒネが出て痛みを感じないのかもしれませんね。

 

さて、自傷のきっかけですが、

どの子どもの場合でも

乳児期から自傷行為をやっていたわけではありません。

自我が芽生えてきた頃に、

言葉で気持ちを表現出来ない子どもは切羽詰まった、

追い詰められた気持をどう表現してよいか分からず、

自分を攻撃するという形ではけ口を見つけてしまったのでしょう。

 

追い詰められているという気持ちを相手にも分かって欲しい、

という思いも込められているのかもしれません。

 

重度自閉症児の中にはトラウマと自傷が結び付いてしまった例もありました。

 

 

チョコレート大好きな、お稚児さんのようにかわいらしい重度自閉症男児

酷い虫歯になる前に歯科医院で歯磨き指導などで

慣らしておけばよかったのですが、お母さんはついつい避けていました。

いよいよ虫歯の治療が不可避となって

近くの歯科医院に駆け込みました。

 

初めての歯科治療です。

 

何人かの歯科助手さんに押さえつけられ、なんとか応急治療はしました。

しかし、それでは終わりませんでした。

帰宅した後、寝転んで泣き喚きながらあごを叩きました。

 

フラッシュバックして自分のトラウマを再現しているうち

嫌な事とあご叩きが結び付いてしまい、

ちょっとした不快感の時にもあご叩きをする、

というように常同的な自傷行為となってしまいました。

 

(その後、男児の虫歯治療はこども病院で、全身麻酔でやりました。

麻酔から覚めた時は待合室の椅子に座っていた・・・)

 

こばとに通って来ていた時は、

物理的にこぶしがあごに届かないよう、

肘にギブスをつけてあご叩きの行為を忘れさせるようにしました。

しばらくするうち、ギブスをはずしてもあごを叩かなくなりました。

 

自傷行為は自分の切羽詰まった気持ちを

他者にアピールしようとして出てくることが多いので、

訴える相手がいない時はやらないように思います。

(もっとも自分ひとりの世界にいる時は、

切羽詰まる場面はまずないので自傷する必要もないでしょうが。)

 

それでは、子どもの自傷行為にはどのように対処するのが]ベストか?と

問われれば、即効性のある対処法を見つけるのは困難で、

対処法も一つとは限らない、と答えるしかありません。

 

自傷行為を始めた発端や

自傷行為をやってしまう状況が個々によって異なっているので、

対応もその子供、その場に合わせて

最善、適切な方法を見つけていく事が必要です。

 

押さえて止めざるを得ない事もありますが、

自傷が他害行為に転化してしまうこともあるので注意が必要です。

 

いずれにしても自傷行為が常同化する前に対応することが必要です。

 

自傷は本人が困難に陥った状況をどうすることも出来ずに

自分を攻撃するという形を取ってしまうことが多いので、

子どもの気持ちを代弁してあげたり、

あまり負荷をかけないように配慮、気を配ることも大切です。

 

そして自傷行為で気持ちを表現させないよう、

それに代わる気持ちの表し方を教え、

自傷の消滅につなげていきたいものです。

 

しかし、決め手がなく対応が後手にまわってしまって、

自傷が強くなったり、頻発するようでな場合は、

小児精神・神経科を受診し

一定期間、薬物療法を試してみることも対処法の一つとなるでしょう。

 

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