心をのばす子育て

障がい児がだすサインの解読法

集団に参加するために

集団参加のきっかけづくり

 

 

 人への関心が持ちにくい自閉症児の場合、

集団に入れたからと言って、本人が周りを見て自発的に活動に参加したり、

自分から友達と関わり対人関係を好転させていく、

という展開は期待できません。

 

 周囲の子ども達がやっている活動を見て、

頑張ってみよう!の前に、出来ない!分からない!と感じると

その場からさっと離れて拒否行動アピールにでることが多いでしょう。

離席どころか、不適切行動に出てしまうこともあります。

走り回る、椅子を倒す、物を投げる、電気のスイッチをいじる、大声を上げる・・・

 

制止しないわけにはいかないいたずら事をやって

拒否の気持ちを分かってもらおうとします。

 

そのうえ、真似して欲しいこと事はなかなかやらず、

真似して欲しくない事は直ぐに真似をする、ということはよくあります。

また、集団の中では他児の泣き声や大声に感応して

自閉症児も同じような行動が誘発されることがあります。

 

自他の境界があいまいな自閉症児は、

他児への叱責を自分の事のように受け止めて、騒いでしまったり、

逆に、叱責した大人を模倣して同じような行動を取ったりすることがあります。

 

 

保育士が集団活動に参加させようと試みても、

自閉症児は興味のないことはやりたがりません。

興味のあることは限られているし、その興味もはたから見れば

どうしてそんな事に興味を持つのか、不可解なものが少なくありません。

 

活動に参加させようとして拒否され逃げられた時のNG

子どもの後を捕まえようと追いかけてしまうと、子どもはさらに逃げ回って

追いかけっこのパターンが出来てしまうことがあります。

そうなると子どもの眼中には集団はなく、保育士と二人だけの世界になってしまい、

追いかけっこが楽しい遊びになってしまいます。

集団に期待していたメリットどころではなくなります。

 

自閉的症状を持つ子ども達は、前頭連合野の活動が弱いと言われているので、

友達がやっているからと言って、同じようにやりたい、

出来るように頑張りたい、というような意欲、向上心、目的意識は持ちにくい。

見た目で出来そうもないとおもうと、

すぐに投げ出してしまうか、最初から手を出そうともしません。

 

興味を持とうともしない、やる気のない自閉症児に、

どうしたらやる気を持たせることが出来るか悩みます。

そんなに嫌がるなら無理にやらせない方が良いのでないか、と思ったり

まだ、その発達段階にはない、と判断したりする大人のなんと多い事か。

集団の中に入れても周りのやっていることを見ない、

友達と同じことをやろうとしない、

やる気を出さない自閉症児の行動変容は関わる大人の課題です。

 

 

長い療育経験から実感したことがあります。

 

自閉症児達はやる気を出しなさい!、と言ってもやる気を出すことはありませんが、

出来るようになってくるとやる気、意欲が出てくる!ということです。

 

ならば出来ることを増やしてあげよう!

 

 

集団参加させるには、子どもにやる気が出てくるのを待つのではなく、

出来ることを増やしてあげることが参加のきっかけになります。

 

きっかけづくりの一つは道具を使えるようになることでしょう。

集団では、はさみやクレヨン・絵具・糊、粘土などを用いて

制作活動をする場面がおおくあります。

ですから、はさみの使い方やクレヨンでの色ぬり、糊の使い方、粘土に触る

〝ちぎる”〝折る”の折り紙の使い方などを個別にトレーニングして

出来るという気持ちを育てていけば、制作活動に興味を持ち、

集団の中で自分もやりたいという気持ちになります。

 

平成元年から平成25年まで療育実践していた

こばとの幼児グループ教室、幼児学習教室では、

1回90分の療育時間の中で、

毎回、20分から30分の制作タイムを組み入れていました。

 

食べ物、こだわりグッツ以外、道具など持ちたがらない自閉症児達。

療育スタート時点では、はさみやなどは二人羽織りふうに介助しながら進めますが、

自分でも出来るようになるとやる気になってきます。

制作タイムを楽しみにするようになり、友達がやっていれば自分も

という気持ちなって、自発的に着席して取り組む姿には苦労が報われた思い!!

 

やる気のなさ拒否はやりたくないと同じ気持ちでは決してないのです。

やりたくても出来ないから嫌なんだということが分かります。

 

拒否が半端でない自閉症男児がいました。

 

クレヨンやえんぴつ、はさみを持たせようとすると激しく抵抗し、

その拒否力は大人1人の介助ではタジタジするほどの力、

笑顔を作りながらも汗だくになって介助しました。

しかし、あきらめずに何回か介助で制作をするうちに

ついに、男児自らクレヨンを持つようになりました。

 

あんなに激しく抵抗したクレヨンなのに、自分から持つようになると、

お絵かきがその男児にって楽しい遊びの一つになっていったのです。

嫌だ!は

出来ないから何とかしてくれ、ということだったのね、

後になってスタッフ同士話したものでした。

 

制作は情緒も伸ばします。

成長するにつれて絵や工作に独特の素敵な表現をする子どもが何人もでてきました。

 

何事も出来るようになると興味がわき、着席も続きます。

そして、場を共有することで周りの友だちに対する意識も芽生えてきます。

 

集団参加のきっかけ作りは、制作活動から!!がお薦めです。

出来ることを増やしてあげれば、自閉症児も場を共有することができます。

 

場の共有意識は制作場面以外にも広がっていきます。

こうなっていけば集団参加の効果も期待できるというものです。

 

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陰性でした。