心をのばす子育て

障がい児がだすサインの解読法

困った行動・その3 奇声

<金切声>

 

2歳過ぎの子どもは「キィーッーーー。」という金切声を良く出しますよね。

首元に青筋を浮かせてまで・・・。

「いやだぁ~!!!」のかわりの時もあれば、

金切声を出すこと自体を楽しんでいる時もあります。

 

自閉症の子どもの中には、この、奇声、金切り声を2歳すぎても

引きずって、事ある毎に発してしまうことがあります。

周りの者にとっては耳をふさぎたくなる耐えがたい叫び声です。

 

奇声を出した始めの頃は、親や周りの大人は深く考えずに

「うるさいよ!」とか、「シーッして!」と言って

口元ににひとさし指を当てて見せたりします。

また、周りの子どもは大げさに耳ふさぎをして見せたり、

「うるさ~いッ」と叫んだりします。

 

しかし、自閉症児はこのような周りの反応を誤学習してしまいます。

 

奇声を発した後に、自分で自分の口に指を当てて

「しーッ」の動作を模倣したりすることもあるのです。

「しーッ」の動作の意味を全く理解していなかったのだと、気付かされます。

「静かに!」といっても聞き入れないので、

無視していると、振り向くまで

余計に大きな奇声を発するようになったという例もありました。

 

昔、こばと療育センター時代の話ですが、

長男の奇声にノイローゼ気味になったお母さん、

思わず子どもの口をタオルで縛ってしまった、と苦笑いしながら

話してくれたことがありました。

現代なら虐待で通報されてしまいますね、

それほど奇声はストレスを与えるものなのです。

 

 

この奇声は喉も張り裂けんばかりの声量なので、

声がつぶれてしまうのでは?、むしろつぶれてくれたほうがいいかも、

と思いきや、

どうしてどうしてさらに声はみがきがかかったように大きくなり、

遠くまで響くので、どうしたらいいものかお手上げ状態になってしまいます。

それに、子ども自身、奇声を出すうちに奇声そのものの響きを

楽しんでいるかのように思える節も見えるのです。

 

奇声が繰り返され、さらにひどい金切声になってくると

周囲の人間にとっては耐えがたいものになります。

奇声を聞かされる回数の多い母親は、

奇声が耳に残って、ストレスになってしまうこともあり、

精神不安に陥ってしまうことも珍しい事ではありません。

 

ところで、子どもが奇声を出す場面をよくよく観察すると、

気持ちをうまく伝えられない、

不快感や拒否の気持ちの代弁としての奇声だったのですが、

 

奇声に対して耳をふさいだり、顔をしかめたりする周りの反応を見て、

奇声と周りの反応を結び付けて誤学習してしまい、

その反応を引き出す疑似遊びとして、転化してしまう場合もあります。

 

対処法がとても難しい困った行動です。

 

集団の中で奇声をだされてしまうと他児に影響を与えてしまったり、

その場の雰囲気を壊してしまうため、集団から引き離さざるを得なくなります。

せっかく集団に適応させようとしても、奇声のため

練習の機会が失われます。

奇声は困った行動の中でも一番厄介なものかもしれません。

 

さて、奇声に対する対処ですが、

即効性のある対処法を見つける事はなかなか至難のわざです。

しかし、放置すればエスカレートする可能性もあるので必須の課題です。

 

子どもが奇声を出す場面や状況をよく観察して

困った行動消滅につながる対処法を考えてみましょう。

 

対処法のひとつとして、子どもが奇声を発した状況を見て、

顔をしかめたり、大げさに耳を塞いだり、無視したりせず

「いやだということなのね?」などと声をかけ、子どもの顔を見ながら

気持ちを代弁した言葉を言ってあげることも有効です。

 

集団の中にいる時は、場をはずして静かに落ち着いて話しかけることも必要です。

そして、過度の負荷をかけてはいないか?

要求していることは何か?よくよく観察して、

子どもの気持ちにあてはまる対応を考えたいものです。

 

奇声がでたら、とにかく奇声に変わる表現をその場で教えていく事です。

 

奇声はなんとしても消滅させたい困った行動です。

大人の寛容さ、愛情、忍耐がとても試されます。

 

 

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