心をのばす子育て

障がい児がだすサインの解読法

発語

喃語・発語・言葉

 

2歳を過ぎても言葉が出てこないと心配になります。

不安になります。

目線の合わないし、人に向かって喃語らしい声出しもない!

 

公的機関などに相談して、

根拠のないもう「少し様子を見ていきましょうか。」などと言われると

半分安心の下にに澱のような不安が溜まってしまいます。

 

親の不安に応えるかのように、2008年、

 さいたま市教育相談センター所長の金子 保氏は

「2歳で言葉がない子、増えない子「様子を見る」のは危険です

という著書を世に出しました。

タイトルに衝撃を受けて読んだ方も多いかと思います。

 

 

 

こばとの幼児教室は2,3歳から療育を引き受けていましたが、

殆どの子どもは発語らしい発語は無しで入ってきます。

 

 

発語の出ない理由はさまざまあります。

ADHD傾向のあるお子さんの中には、舌小帯の短いケースが結構あります。

そういう場合は口腔外科のある歯科大のなどの診察を勧めています。

ダウン症やその他の障がいでも発声が出にくい子は多いですが

 

中でも重度の自閉症児の場合、奇声は大きいのに

ふーっと息を吐き出せず、逆に吸い込んでしまう子が多くいます。

吸気はあっても声帯を振るわす呼気を意識的にだせません。

シャボン玉や笛を吹かせてもふーーっが始めはなかなかできません。

 

口形模倣どころか模倣しようという意思がないのか

こちらの口元を見てくれません。

発語を出させたくて物を指差して、名詞を言っても、

共同注視の意識が育っていないために、

指差しの先にあるものに目線が行きません。

「取って!」と言っても言われた物を取ることが出来ません。

 

反応無。

 

音が聞こえないのではありません。

お菓子の袋を開ける音には直ぐ振り向いたりしますから。

 

こばとは発語がないと療育に来た子どもでも、

言葉は出ないもの!、と早々諦めてサインを教えたりはぜず、

子ども1人1人に合わせ

何とか発語につなげようとあの手この手を工夫しました。

 

発語を出させるためにはまず物の名前を聞き分けていく事が必須です。

 

 

 こばとの幼児教室では着席が続き、鉛筆・はさみを持ち続けることが

出来るようになると幼児学習教室に移行させる流れを作っていました。

そのグループでは制作、自転車縄跳びもやりましたが

発語訓練には力を入れました。、

 

必ず絵とことばのマッチングカードを課題に取り入れました、

 

こばとが考案制作した絵とことばのカードは、

余計な視覚刺激を一切排除して、単純な絵と言葉のみ。

しかも、絵の頭文字は50音になっていて、物の名前を覚えると同時に

ひらがな50音も覚えさせようと一石二鳥を狙った優れもの(手前味噌ですが、)

 

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こばと制作絵とことばのカード

 

使い方はいたって簡単、着席が出来るようになった子どもの目の前に

50音の行毎の絵カードを5枚並べ、

あし!いちご!・・と言いながらことばカードを渡して

その絵カードの下または重ねるように置かせます。

この段階では文字が読めなくとも構わないのです。

耳で言葉を聞いて、絵カードの絵を探し、その上に置くだけです。

 

毎日15分ぐらい、耳を使かわせ、目で絵を探させ、

音を発する口、口形を注視させていきます。

 

根気よくやっていくうち、子どもは言葉を聞いて絵を探せるようになります。

そのうち「あ」と言っただけでも「あし」の絵カードが探せるようになります。

と言いながらの口形模倣もさせられるようになってきます。

 

何回かやるうち、つられて音が出るようにもなります。

たった一声の「あ」が出たことに、スタッフは拍手喝采でした。

音の模倣が出来るようになったらしめたものです。

 

 こばとではこうして何人もの自閉症児に発語を出させてきました。

 

でも、口腔内の構造、声帯、喉周りの筋肉の使い方に問題があるのか、

どうしても発声に繋がらない重度の自閉症児もいました。

 

その子たちには千葉県の盲学校で使われているキュード法を試しました。

 

視覚ヒントが文字の理解に繋がり、

口形と指に形でこちらの言う文字を理解して書いたり、

書かれている文字をキュード法を使って読める子どもも出てきました。

 

 

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指文字よりわかり易く教え易かった

 

言葉のない重度自閉症男児のお母さんが

 こばとの7周年記念文集」にキュード法について一文を載せてくれました。

 

 息子はまだ話が出来ません。

  中略

 3年生の時にこばとでキュード法をやってみよう、ということで初めました。

 こばとの先生方も勉強して覚えて下さいました。

 最初の頃、キュードを覚えても知っている人がいなければ大して役に立たないし、

 息子が覚えられるかなと内心そう思いました。

 いまではキュードを覚えて(口形がはっきり出来ないのもありますが)

 音声はでなくとも、キュードを使って何をしたいか伝えようとしています。

 まだ少ししか自分からは言えませんが、

 意思が伝わった時は満足そうでパニックも多少減ってきたように思います。

 先日、学校の授業参観で息子はキュードを使って本読みをしました。

 皆は、何を言っているのかわかりませんでしたが、

 キュードを覚えた先生が「上手に読めたね。」と言ってくれました。

 字を書く時もキュードを入れた方が息子にはわかりやすいようです。

  後略

 

話すことがすべてに優先するわけではないけれど、意思を伝えられることは

すばらしいこと。人格を形成します。

 

去年の5月、3歳になったばかりの、自閉症状はないものの

言葉が2語ぐらいしかなかった女児がこばとの療育に来ました。

もうすぐ一年になりますが、いまでは3語分以上のセリフ!!!

性格も別人の様に明るくなって・・・

 

意思を伝え合うのは音声だけではないかもしれませんが、

まず顔と顔を見合わせるところからスタートですね。

 

 

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意思を伝えあうって子育てのスタートだね。