心をのばす子育て

障がい児がだすサインの解読法

困った行動・その2 こだわり

<人間皆、なくて七癖>

 

こだわりは人間誰しもが持っているものと言えますが、

自閉的傾向を持つ子どものこだわりの大変さは

他者の気持ちはお構いなく、自己中心。

自分のこだわりを充足させるために時と場所を選ばす

他者を盛大に巻き込んでしまうことにあるでしょう。

 

マンホールの周りを回るこだわりを持つ自閉症男児がいました。

マンホールを見つけると親が急いでいようと止められません。

焦る親の気持ちを尻目に、気が済むまでグルグルまわって

から先に進むというパターンでした。

 

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斜め下に見ながら回る。

 

強迫的に執着、繰り返したりするので

親にとっては子供のこだわりが

ストレスになってしまうことも少なくありません。

 

こだわりは多種多様で、しかもずっと同じというわけではなく、

こだわりがなくなったかに見えても、

かたちを変えて別のこだわりとして復活してくることがあります。

また、こだわりこだわり期間も短期間で消えるものから

長期間続くものまで様々です。

 

幼児期のこだわりで困るのが道のこだわりです。

子どもは一度通った道は視覚的に良く覚え、

自分にとって安心安全と確認しているので、親の都合で道を変更させたり、

いつも曲がっている交差点を曲がらなかったりすると、

不安に陥ってパニックになってしまうことは、自閉症児の親が経験することです。

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ちがう方向に行くと車内で暴れる

 

たった一度通っただけの道の記憶の確かさには驚くばかりですが、

「こっちの道でも同じ目的地に着くよ」といっても聞く耳を持ちません。

 

服のこだわりも母親を悩ませます。

同じ服ばかりを着たがったり、新しい靴に取り替えられなかったり、

変えようとすると、激しく抵抗されてしまいます。

洗濯もままならない時も出てきます。

 

本や物の並べ方にこだわる子どもも多くいます。

自分の物だけならまだしも

家の中の物もいつも一定の並べ方したがり、

置き場所や並び方を変えると怒ってすぐ、自分の並べ方にします。

 

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並べて眺めるだけ

 

また、特定の物をお守りのように手元に置きたがったり、

持ち歩くことに執着して手放せないことがあります。

隠したり取り上げたりしようものなら、

大騒ぎになってしまうという話もよく聞きます。

 

こだわりは視覚認知が育ってくる頃に目立ってきます。

子どもは視覚的に自分にとって安心安全と確認した物に執着し、

あるべきものが「無い」などの変化に対しては不安になり落ち着かなくなります。

 

 

発達障がいの子ども達のこだわりは、

不安回避、自己防衛の意味合いが大きいかもしれません。

言語理解が弱いので、自分の目で安心安全と確信した物、事に、

執着することで自分の気持ちを安定させるのでしょう。

 

こだわりは不安な時状況が変化した時に強くなる傾向があります。

 

 

さて、こだわりに対する対応ですが、

こだわりのピーク時に無理にやめさせようとすると、

余計に執着してしまう傾向があります。

 

まわりの大人が子供のこだわりにこだわって、

むきになって止めさせようとすると、かえって悪化・強化させてしまいます。

 

子どもの気持ち、不安の原因を観察し、

ちょっと距離・時間をおいて対応を考えてみましょう。

かかわる大人の側に心のゆとりが必要ですが、

子どものこだわりのピークが過ぎた頃に、少しずつこだわる気持ちを

他の事に振り向かせていく方がベターです。

子どものこだわりたい気持ちを受け止めながらも、

気持ちの切り替えが出来ていくよう、根気よく言葉で働きかけていく事が大事です。

 

子ども自身に状況に対する理解力が出てきて不安が薄れていくと、

気持ちの切り替えもよくなり、

こだわりは縮小・消滅の方向に向かって行きます。

 

しかし、こだわりが完全に消滅するわけでなく

不安定になった時は形を変えて、また出てくることは覚悟しておく必要が

あります。

 

たとえこだわりが出てきても、他者を巻き込まないのであれば

許容範囲ととらえ、余裕のある気持ちで見守りつつ

環境に不安定要因がないか、観察することも必要でしょう。

 

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人は皆自閉傾向を持っている